CASE 15:学名解説

現在知られている全ての生物には名前がついています。
それは通称名だったり和名だったりします。 しかし、それでは1つの生物に複数の名前がついたり、言語が変わると名前も変わってしまいます。
そこで、万国共通の名前を規則に従って付けることになりました。
それが学名です。

用意する物:面倒くさい文章を読む気合、間違いを優しく指摘してあげる心
第01回:学名とは?
まず学名とは何かといいますと、個々の生物につけられた名前です。
ラテン語で書きあらわされ、「属」と「種」の二つの部分からなる二名法と呼ばれる方法で命名されます。
「Haworthia pygmaea」を例にしますと、

「Haworthia」はその生物が所属する”属”というグループを指し、「pygmaea」はその属内で唯一その名前をあたえられた”種”を定義します。 そして、「Haworthia」はハオルチアで良いとして、「pygmaea」はラテン語で「ピグミー(伝説上の小人)のように小さい」という意味を持ちます。 つまり「Haworthia pygmaea」で「ハオルチア属の中でも小さい種」=「マジちっちゃいハオルチア」という意味の学名を与えたわけです。

このように人間は生物に学名を付していったわけです。
・・・はい、そこ寝なーい。
まだまだ先は長いよ〜

第02回:細分化
今回は種の細分化についてです。
前回、学名の基本は二名法と言いましたが、var. や f. など二名で済まないときがあります。
これは、生物の個体差の度合いをあらわしています。
もちろん、多少の違いは無視されます。
しかし、目に見えて無視できない違いはさらに細かく分類されるのです。

従来は目で見える形の差異を変種にしてきましたが、最近はDNA解析が進み今までと違った分類・細分化がされてますけどね。

長くなりそうなので、次回「var.」「f.」などの意味を解説します。

第03回:「var.」の意味
名前に「var.」もしくは「v.」という表記を見たことがあると思います。
これはどちらも「variety」の略で「変種」を意味します。
この変種とは、花や葉の形状、大きさ、色など、連続性のない差異、つまり、人間で言うところの個人差とは異なるレベルで他とは違った特徴のある個体群を指します。
また、分布に関係なく、基本種や他の変異体と同じ場所に生育します。

例えば、「Haworhita pygmaea」において明らかに大きな個体群であれば、
「Haworthia pygmaea v. major」
(※majorは「大きい」を意味するラテン語です)
となり、「Haworthia pygmaea」のなかでも特に大きい個体群を指し、その個体は基本種の「Haworthia pygmaea」と同じ場所に生育している変種とされるわけです。

ちょっとわかり難いかもしれませんので、理解できないという方は掲示板に書き込んでください。
絵もつけて再説明しますので。

第04回:「f.」の意味
名前に「v.」の他に、「f.」という表記を見たことがあると思います。
これは「forma」の略で「品種」を意味します。
この品種とは、葉の斑入りや成長点の異常など、明らかに他の個体と比べて変異があるが、種や変種に細分化できるほど、分類的に大きな変異ではないときに使われます。

例えば、「Haworhita pygmaea」において起きた変異であれば、
「Haworthia pygmaea f. variegata」
(※variegataは「斑入り,斑紋がある」を意味するラテン語です)
となり、「Haworthia pygmaea」のなかでも「斑入り」という変異をもった個体を指し、「斑入り」という以外は基本種の「Haworthia pygmaea」と特に変わりないわけです。
成長点の異常を表す「monstrosa(石化)」や「cristata(綴化,帯化)」も同様です。

第05回:「ssp.」の意味
名前に「ssp.」という表記を見たことはありませんか?。
これは「subspecies」の略で「亜種」を意味します。
「var.」と混じって使われたりするので、「var.」との違いがわからない方もいると思います。
この「ssp.」は「var.」同様、基本種と形態的に違う変異を持つことがまず条件になります。
しかし、「var.」は分布に関係なく、基本種や他の変異体と同じ場所に生育する変異体を指すのに対し、「ssp.」は、基本種や他の変異体とは違う、変異体自身のみのコロニーをつくり、生育している場合を指します。

例えば、「Haworhita pygmaea」において明らかに大きな個体群があり、その個体群が基本種や他の変異体と違った場所に独自にコロニーを形成、生育していれば、
「Haworthia pygmaea ssp. major」
(※majorは「大きい」を意味するラテン語です)
となり、「Haworthia pygmaea」のなかでも特に大きい個体群を指し、その個体は基本種の「Haworthia pygmaea」や他の変体とは別の場所に生育している亜種とされるわけです。

また、基本種と形態も生息域も異なるために、亜種から独立して、新種とされることが多いです。
そのときは、新しい学名が付くことも多々あります。

第07回:「sp.」の意味
種名が「sp.」だけなのを見たことはありますか?
これは「species」の略で「種」を意味します。
このsp.は、おそらく新種と思われる個体が発見されたが、まだ種名が決定されていない場合に使用されます。
発見された産地名や特徴、採集ナンバーなどで仮に命名する場合もあります。

例えば、とある荒野で新種と思われるハオルチアを発見したのであれば、
「Haworthia sp.」
となり、とりあえず種名が付くまでは名無しさんとなるわけです。

第08回:「aff.」の意味
あまり見かけませんが、種名の前に「aff.」という表記が付くことがあります。
これは「affinity」の略で「未同定種」を意味します。
この未同定種は、おそらく新種と思われる個体が発見されたが、まだ種名が決定されておらず、すでに発表されている品種に形態が似ており、血縁があると考えられる場合に使われます。

例えば、「Haworhita pygmaea」によく似た新種を発見した場合、
「Haworthia aff. pygmaea」
となり、「Haworthia pygmaea」に形態がよく似ているが、おそらく別種と思われる新種。ということを意味します。
まあ、名無しさんといえば、名無しさんなんですけどね(笑)

第09回:フィールドデータ
前回までは学名の各記号の意味について解説しました。
それでは今回は何を解説するのかといいますと、ラベルの学名後に書かれているアルファベットや数字についてです。

H. cooperi v. venusta GM292 NE of Alexandria CL2

という感じのラベルを見たことはありませんか?
「H. cooperi v. venusta」までが植物の学名で、それぞれ「GM」が採集者、「292」が採集番号、「NE of Alexandria」が採集地(産地)、「CL2」は何株目からのクローンかを表します。

これらの情報は「フィールドデータ」と呼ばれ、ある種を産地ごとに1グループとしてまとめたもので、学名と同じ役割を持ち、
「同種だが産地によって異なる特徴を持つもの」
「形態が他の様々な種に似ていて、どの学名を当てはめれば良いか判断できないもの」
「同種・同産地だが、微妙な形態差があるもの」
「新種」
などを区別するのに非常に便利なものです。
また、学名が同じでも採集番号や産地違いのものが別の学者により別種扱いになったりするので、それをたどるのに必須となります。
さらに、インターネット上でフィールドナンバーから学名や産地情報を探すこともできます。
が、ハオルチアについてはよく整理されていないようで、残念ながらネット上での検索は困難です。何らかの会に入り、会誌などで情報を集める必要があります。

※フィールドナンバーのデータベース
Cactus and Succulent Field Number Query
http://ralph.cs.cf.ac.uk/cacti/fieldno.html

第10回:フィールドデータ解説
前回を参考に、それぞれのフィールドデータが何を指すのかを解説します。

まず、「採集者(採取者)」とは、その植物を採取した人の名前を略したものです。「GM」であれば、「J. Gerhard Marx」の略号で、その採集者と一緒についている「採集番号(採取ナンバー)」とは、その植物を採取した人が植物に割り振った通し番号です。
つまり「GM292」とは、J. Gerhard Marxさんが292番目に採取した個体であり、この番号がふられたH. cooperi v. venustaは間違いなく同産地から来た同種なわけです。

そして、「採集地(産地)」は、その植物を採取した場所をさします。
同種であっても、「産地=生えている場所」が異なると植物の形質が異なったりしますので、どこで採取されたものであるかは、重要になります。
アフリカに詳しくないし、会誌などの資料もありませんので、各産地の紹介は勘弁してください(苦笑)

第11回:学名の読み方
学名の読み方の質問を受けたのですが・・・
私はラテン語教育を受けていませんので、正しいラテン語読みがわかりません。
コレも間違っている可能性が大いにありますことを、ご容赦ください。

基本的に植物の名前はラテン語で命名されます。
しかし、必ずしもラテン語読みである必要はありませんし、実はラテン語読みも複数の方法があります。
正直、英語読みでもローマ字読みでも、なんでもイイと思います。
ここではラテン語読みに近い方法を紹介したいと思います。
間違い等あれば、ご指摘ください。

<母音>
A:ア
E:エ
I:イ
O:オ
U:ウ
Y:イ

<二重母音>
AU:アウ
EU:エウ
EI:エイ
AE:エー(絶対ではない。また、AEAはアエア)
OE:エー

<子音>
B:バ行
C:カ行
D:ダ行
F:ハ行
G:ガ行
H:ハ行(発音しない場合アリ)
J:ヤ行
K:カ行
L:ラ行
M:マ行 場合によっては ン
N:ナ行 場合によっては ン
P:パ行
Q:カ行 場合によっては クヮ、クィ、クェ
R:ラ行
S:サ行
T:タ行
V:ワ行
W:ワ行(実はラテン語に「W」は存在しない)
X:ク+サ行
Z:ザ行

SC:ス+カ行
XC:クス+カ行
CC:ク+カ行

TH:タ行
RH:ラ行
PH:ファ行
GN:ン 場合によっては ニャ、ニュ、ニョ

他にもありますが、ややこしいのと面倒なので割愛します。

<アクセントと長母音>
規則があるはずですが、さっぱり判りません(汗)

まあ、こんなところだと思います。
あとは、他人が読むのをマネすればイイんじゃないですかね?
実際、人名や地名由来のものは、その本来の読み方でなければ読めないものが多いです。

つまり、アレです。
読みたいように読む。
ただし、表記はアルファベットで正しく!

じゃないと、流通時にわけのわからないカタカナ名で広まり、伝言ゲームで名前が変わり・・・
になってしまいかねませんので。

第12回:「cv.」について
名前に「cv.」という表記を見たことがあると思います。
これは「cultivar」の略で「栽培品種」を意味します。
この栽培品種とは、栽培中に原種から発生した突然変異種を意味しています。

例えば、「Haworhita pygmaea」の栽培中に、枝変わりや実生に関わらず、非常に白い突然変異種が発生したとします。
この突然変異種に、栽培していた人は純白ピグマエアと新しい名前を与えたとします。
ただし、栽培品種名に「ラテン語」を使ってはいけない規則がありますので、名前は「純白」となります。
すると・・・
「Haworthia pygmaea cv. Junpaku」
と表記することになります。

が、
実は2004年に国際栽培植物命名規約が変更になり、「cv.」が使えなくなりました
さらに、表記方法は「‘’」もしくは「’’」で名称を囲むことになりました。
また、日本語に関して特別規定があり、
属名の和名と見なされる部分は表記しないことになっています(ハオルチアには関係ありませんが・・・)。

以上を踏まえると、
上記の品種の正しい書き方は
「Haworthia pygmaea 'Junpaku'」
と表記することになります。

また国際栽培植物命名規約が変更になったら、どうなるか判りませんけどね!


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